文字数:8,000字程
テーマ:光の生物と闇の生物の比較解説
Sky考察HP『the Vault Collective of Sky』開設にあたり2023年2月執筆
【序文】
こんにちは、自分はヒースと申します。
Sky考察においては、普段は生物学の視点から解説をさせていただいております。
この度、Sky考察専用のHPが開設されると知り、一つ花を添えるために筆を取らせていただきました。
今回の考察では、光の生物と闇の生物、2つの生物の違いをリアル生物学の視点から解説してみようと思っております。
恐らくファンタジーであるSkyという異世界の物事を、現実世界の生物学で100%語り切れる事はないでしょう。まだまだ星の子たちに明かされていない、謎めいた魅力に満ち溢れた世界ですから。
ですが、もしかしたら筆者の知識が皆様の視野を広げる一助になるかもしれません。筆者の視点から見える事を共有すれば、万華鏡の様に数多の視点からSkyの世界のそれぞれの魅力を見つめる事ができるかもしれません。
共有する事、それが自然科学を好む筆者のSky考察スタンスです。
ですので、生物学視点から拝見したSky世界を記述させていただきます。
どうぞお付き合いの程よろしくお願いいたします。
【目次】
【序文】
【目次】
【考察】
○光の生物と闇の生物の違い
○光の生物について
○闇の生物について
【結論】
【あとがき】
【参考資料集】
【考察】
○光の生物と闇の生物の違い
まず、光の生物は星の子の助けとなる行動をしています。
これは生態系における『共生』にあたる関係性だと考えられます。
逆に、闇の生物は『捕食行動』によって光を奪い取る動きをします。
両者は相反する性質を持っており、興味深い生態を持っております。
ですので今から2つの行動の違いについて、生物学の知識と照らし合わせながら解説させていただきます。
○光の生物について
光の生物はSkyという物語において、星の子を助けてくれるかけがえのない存在です。
蝶々は飛行を補助し、マンタは背中へ乗せてくれます。鳥たちはエネルギー補給をしながら旅路を随伴し、光のキノコは雨の中でエネルギーの回復をしてくれます。
ではなぜ光の生物は発光し、星の子へエネルギーを分け与えてくれるのでしょう?
著者が推測するに、それは「共生する事が光の生物の生態だから」だと考えられます。
手がかりを得る為にはまず、現実世界の生物発光を例に挙げてみましょう。
A)生物が光る目的(現実世界)
・通信…仲間との連絡
・誘引…光で餌を誘き寄せる
・照明…深海を照らす
・擬態…体を大きく見せる
・撃退…敵への目眩まし
B)光る生物の例(現実世界)
・海洋バクテリア(細菌:最も原始的な単細胞生物)
・海洋プランクトン(微生物:細菌よりも発達した多細胞生物)
・クラゲ
・深海魚
・茸
・無脊椎動物(昆虫・イカ・ミミズなど)
*一部大型生物はバクテリアと共生し、体に住み着いたバクテリアの力を借りる(具体的には発光する生体高分子ルシフェリンを貰い受ける)
*或いはバクテリアやプランクトンを捕食し、成分を袋へ集めておいて、後で一気に使うパターンもある
*発光生物の殆どは海洋生物
*鳥類・哺乳類・爬虫類・両生類・植物の発光生物は現実世界には存在しない
上記例を踏まえて解説をさせていただきます。
現実世界での生物発光は深海の海洋生物に多いです。
それというのも深海では光は貴重であり、目立ちやすいからです。
深海の200mより深い海域では光のない暗闇の世界が広がっております。光がない故に光合成による食料の安定供給のない世界。特に3,000mよりも深い深海帯・アビスとも称される領域では水温は2〜4℃の低音、水圧76Mパスカルという高い圧力に常時身体を押さえ付けられ、深淵の生物たちは自由に身動きが取れません。食料難で個体数も少ないです。
ですので繁殖の為に伴侶を探すのにも苦労します。
そんな中で生物発光によって通信を行い、互いを呼び合う事は有力な手段となりました。光の色や、発光のタイミングによって「仲間がここにいるよ」と確実に伝えたのです。
陸上で例を挙げますと蛍の繁殖期の発光をイメージです。
Sky世界の生物の行動については、主に通信の目的で発光している様に考えられます。
光の生物たちは自ら発光する事によって「光るのは仲間の目標だよ」と伝えあっているのだと筆者は推測しています。
続けて、他の発光の利用法についても説明をさせていただきます。
光によって餌を誘引したり、暗い深海を照明で照らしたり、発光によって体を大きく見せて擬態をして外敵を遠ざけたり、目眩しをおこなって外敵を撃退したり。
生物発光はこの様に様々な効果を持ちます。
もしかしたら光の生物は擬態によって体を大きくみせて、闇の生物から襲われにくくしているという可能性もあります。…ただ撃退に関してはSkyではなさそうです。通称エビ1エリアと呼ばれる墓所の手前のエリアでは、マンタの光を捕捉し、暗黒龍が獲物を狩っておりますから。
さて、これらに加えてSkyの世界では更にもう一つの役割が生物発光には存在すると筆者は考えております。
それは「補給」。他の生物へエネルギーを分け与える事です。
星の子は光や熱が活動の源です。
星の子は光の生物へ触れると、エネルギーを補充して羽ばたけたり体力が回復したりします。
このやり取りが星の子だけでなく、光の生物同士でもエネルギーの共有があるのかは明示されておりませんが…少なくとも、草原の大精霊のムービーで炎から蝶々を生み出している場面で「炎≒光の生物」であるという事が示唆されています。両者は可逆的に変化する事ができるのです。
よって、光の生物同士でもやり取りがあるのではないかと筆者は仮定しております。
また、OPムービーは何度か文章が変わってこそいますが、星の子へ対して「落ちた星々へ光を分け与えて、天へ還してほしい」という事が一貫して示されております。
故に、光を分け合う事は共生の手段の一つであり、Sky制作陣営は共生を協力の象徴として強調しているのだと考えられます。
現実世界の生態系において、生物同士の関係性は次の3択のうちどれかとなります。
① 敵対
② 無関係(中立)
③ 共生
この内①はできれば避ける事が望ましいです。争いよる体力の消費は生存確率を下げます。
多くの場合は②無関係を貫きます。食べ物や生息域をメジャーな生物種とは被らない様に避ける事で、縄張り争いや生存競争を避けるのです。(この事を『棲み分け』と呼びます)
この内③については互いに不利益がなく、片方あるいは双方に利益がある事が求められます。
Sky生態系においては光の生物については③共生が積極的に選ばれていると、筆者は考えます。なぜならば、光を分け与えるという事はわかりやすく相手の生存を助ける行為である為、敵意がないと簡潔に示す事ができるからです。
それにSkyのテーマには「善意のつながり」「思いやり」が掲げられております。
以上の理由から「Skyの光の生物が発光する理由は、進んで共生する事で争いを避ける生態を持っているからだ」と筆者は考えます。
○闇の生物について
さて、続いて闇の生物についてです。
闇の生物は捕食行動によって他者から奪う生態を持っています。
まず、闇の生物が光を溜め込んでいる事は、蝕む闇の描写や深淵の季節で明らかになっております。
蝕む闇は星の子の回復をしてくれませんが、燃やすと種火と蝶々を放出します。星の子はそこからエネルギーを得る事ができると知っています。それと繰り返しになりますが、蝶々については草原の大精霊のムービーで炎から蝶々を生み出しており、「炎≒光の生物」であるという事を示しています。
また深淵の季節の最終クエストでは、深淵の巨影と筆者が仮称している大型の闇の生物の口内から、溜め込んでいた光が吐き出され再び海洋生物として蘇る様が描写されております。
*見やすい様に加工してある画像です
それはつまり、闇の生物は光を奪い、溜め込む性質を持つという事の説明ができます。
特に深淵の巨影に至っては、一つの生態系分のエネルギーを圧縮して体内へ保存できる程の容量を持つ。それ程に奪い溜め込む事に特化しているのです。
この様に、闇の生物は光の生物とは異なり、得た光を共有せず独占する行動をとります。
なぜ、独占するのでしょうか?
それは光の探求者の頃に行われた『公式生放送Vol.1』にヒントを見る事ができます。
この放送の中では光の探求者について「光が希少になっていった時代があり、光を探し求める時代が始まった」という旨の解説があります。
つまり光を共有する余裕がない時代が訪れたのです。
闇の生物たちは光の生物と比べて、暗く光の届きにくい場所へ暮らしていた様に思われます。すると、光の生物に比べより一層光が届きにくくなっている訳ですから飢餓状態へ陥りやすい。
分け合う余裕はない。
使えるものはなんでも使いたい。
となると③共生はできません。②無関係でいる事ももったいない事です…なぜならば目の前の生物を食べてエネルギーを奪う事ができれば、飢餓による死を免れる事ができるからです。
つまり①敵対によって、手っ取り早く他者から光を奪う方向へ行かざるを得ないかった生物グループがいた。そのグループが闇の生物の祖先になったのではないか?と仮説を立てる事ができます。
闇の生物はおそらく、元々は光の生物と同じ存在だった生き物が、徐々に奪うことに特化して進化していった存在なのではないかと自分は考えております。
この様な「他者から資源を奪う」食物連鎖の流れは、現実世界では原始海洋での動物の生存競争の激化に例を見る事ができます。
現実世界の生物の歴史において6億年ほど前、動物の最初のグループが誕生した時、動物には牙も殻も爪もありませんでした。
原始の海、原始海洋は栄養で満ち足りており、海藻の様に触手を広げれば自然と栄養が手に入る状態だったからです。この頃の動物群を『バージェス動物郡』と呼びます。
しかし変化が訪れました。
海から様々な生物が生まれた結果、海中の栄養が乏しくなり、他者から栄養素を奪い取る動物が登場しはじめたのです。この頃から登場した動物たちは牙や殻や爪を纏い始めました。
この頃、つまり5億4千万年ほど前の動物郡は『エディアカラ動物郡』と呼ばれており、甲殻類の台頭が化石から見て取れる状態となっております。
エディアカラ動物群の中には甲殻類の近縁であるアノマロカリスが含まれております。筆者は暗黒龍(dark dragon)のモチーフ元はアノマロカリスではないかと考えております。なぜならば、アノマロカリスは外骨格に覆われ、太いエビの様な2本の触手を頭部に備えた生物だからです。そしてアノマロカリスはエディアカラ動物群を代表する大型肉食動物でした、それは転じて一番最初の肉食動物であった、とも言い換える事もできます。
(そしてこのエディアカラ動物群による食物連鎖の発生に対応して、爆発的な動物の進化が引き起こされ、現存する35グループの動物たちの祖先が全て出揃いました。この出来事を『カンブリア大爆発』と呼びます。詳細はまた別の機会にお話させていただきます)
さて、これらの歴史を踏まえてSky王国の歴史を考えると、状況がエディアカラ動物群の誕生時期に近しい状態にあります。
暗黒龍の台頭がもしも光の希少になる中で引き起こされたものならば、それは原始海洋の貧栄養化の中で肉食生物が誕生した経緯と重なる部分があります。
Sky運営陣の方々は、闇の生物のオマージュ元としてこの進化の歴史をなぞったのではないではないか?そう筆者は考えております。
生物の歴史において生物は進化が進めば進む程、他の生物に依存した前提とした造りとなってゆきます。それは食料としての依存であったり、共生が深くなって互いがなくてはならない存在になったりと、様々な理由があります。それが自然な進化です。
ただもしかしたら光が枯渇した原因は、AURORAの季節の歌詞で何度も訴えかけられていた自然からの搾取が精霊によってもたらされたからかもしれません。そちらのパターンの場合には自然な進化ではなく人為的な影響がありますので、また別のパターンで仮説を立てる必要があります。
なんにせよ、闇の生物もまた希少となってゆく光に対して己のできる事を尽くした生物だと筆者は考えます。
光の生物ほど星の子へ身近な存在ではありませんが、闇の生物もまた生きる事へ真摯に向き合った存在なのです。
筆者の感性で言葉にするならば、ストイックに機能美を突き詰めた生物なのです。
さて、では両者の解説をした所で改めて違いを考えてみます。
光の生物と闇の生物は相反する2つの習性を持っております。
これはSkyという物語を語る上で、対比を目立たせて意図を持たせる為なのだと推測できます。
Skyという物語のテーマは「つながり」「思いやり」「おどろき」です。
この言葉は2020年1月に行われたthatgamecompany特別講義にて示されたスライドに記載があったと、ゲーム情報サイト4Gamerさんの記事に書かれております。
このうち前者「つながり」「思いやり」を考えてみるに、運営さんは星の子を光の生物へ共感させたいのだと推測されます。
また「おどろき」の部分には闇のさなかで身を寄せ合う星の子たちの姿が描かれています。異なるステージを対比させ、より一層つながりや思いやりを際立たせているている事はここからも見て取れると自分は考えております。
【結論】
Sky生物の行動を生物学の視点から考えると、以下の様に筆者には結論付けられる。
光の生物は光を共有して、他者と共生する戦略を持ち。
闇の生物は光を独占して、他者を捕食する戦略を持つ。
両者は正反対の生き方をして、生態系でそれぞれ生き延びてきた。
どちらも生きる事へ真摯に向き合ったのである。
【あとがき】
以上を持ちまして、Sky考察『光の生物の共生、闇の生物の依存』の締めとさせていただきます。
この後は、この文章に登場した用語の解説となるホームページや、考察を書くにあたって筆者が参照したホームページへのリンクを記載しております。
ふと気になった用語がありましたらおつまみ感覚でご覧いただけますと幸いです。
なお、この考察は1つの仮説である事。確実な情報ではなく推測である事。
そして他の星の子たちの考察を筆者が楽しみにしている事を書き添えさせていただきます。
自分は色んな視点からの感想や考察が読みたいです!!
だってお互いのSkyへの好きを共有し合えば、もっと楽しいから!!
では、最後までお読みくださりありがとうございました!
またお会いしましょう。
2023年2月5日
生物好きな星の子 ヒース@dauanelyuma
さかな子さん
コメントありがとうございます!
ヒースの進化の話を拾った考察、楽しく読みました!
なるほど、自分の言葉から「闇の蟹が進化の途上なのか?」と思われたのですね!考察の連鎖が醍醐味ですわ。
自分なりの回答は「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」になります。
ですので、以下へ2点の仮説を併記させていただきますね。
さかな子さんの意見を反映したパターンと。
もう一つの可能性としての、生物の例を紹介させていただきだきす。
①進化途上パターン:仰る通り進化の途上で、まだ奪うことに特化していないのかも。
自分は文中で「闇の生物はおそらく、元々は光の生物と同じ存在だった生き物が、徐々に奪うことに特化して進化していった存在なのではないか」と書いたので、そのパターンに沿った考え方です。
現実世界の例ですと、食肉目であるジャイアントパンダが200万年前に肉食から草食(竹)へ移行したパターンがあります。
『ジャイアントパンダ』Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80
②雑食パターン:実は雑食性で、食料が十分あるかどうかで生態を切り替えるタイプなのかも。
闇の蟹は地域によって、光を襲ったり、穏やかだったりしますね。
現実世界の例ですとキツネが思い浮かびます。キツネは雑食なのですが、普段は肉食の生活をしていて獲物に困った時だけ雑食の生活を送ります。
他には、類似の生態は以下の2例が挙げられます。
・シャチ…同じ種でも、群れによって食べる物が違う。(食べ物…南米:オタリア、北大西洋:小魚、鯨)
『シャチ』Wikipedia 特徴の項にタイプA〜Dの食性記述あり。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%81
・ダーウィンフィンチ:フウキンチョウ科のグループ、棲み分けの為に種レベルで食べ物を固定する進化を遂げた。その為、クチバシの形状が種によって異なる。
(食べ物…木の実、ナッツ、昆虫食、吸血)
『ダーウィンフィンチ類』Wikipedia 系統と分類の項に細かな記載あり
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%81%E9%A1%9E
上記2つのパターンを踏まえると。
もしかしたら闇の蟹は進化の途上であるのかもしれないですし。
或いは光に飢えているか否かで、生活の仕方を変えているのかもしれないと思います。
小島の蟹さんや、焚き火の蟹さん達は満足して生活しているのでしょうね。
ただどちらの生態でも、自分の為にがんばった結果であると自分には言えます。
初めての受け答えなのですが、長くなってしまいました。
これでご回答になっていたならばよいのですが。
闇の生物は光が足りなくなり捕食する方向へ進んだ、というところで闇の蟹を思い出しました。
通常の闇の蟹は暗い場所にいて煤を纏い、星の子や散った光の翼、火などを襲います。
しかし楽園の煤のない星の子を襲わない蟹は、暖かな陽の当たる小島で2匹悠々と捕食行動もせず過ごしています。
また、襲ってこない煤のない蟹は捨てられた地の戦場にもいますが、あそこの蟹たちは狭いところに捕まってはいますが焚き火で温められています。
陽の光や火で充分に「光」が与えられていれば、蟹は凶暴化しないのかもしれないですね。
暗黒竜はもはや煤を纏った個体しか現存していませんが、闇の蟹はまだ進化の途中だったりするのでしょうか……。